2145896 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

新英語教育研究会神奈川支部HP

新英語教育研究会神奈川支部HP

2004 荒木 晶子さん

●講演「英語教育の中に異文化コミュニーケション教育をどう取り入れるか」
               荒木 晶子さん(桜美林大学教授)
 コミュニケーションとはなにか? 講演を通じて、参加者はそれそれのコミュニケーション観ができたようでした。

(1) クイズ
・ コミュニケーションクイズ:「みなさんの一日の出来事のなかでコミュニケーションだと思うもの○をつけてください」という問いで15項目に○×をつける。そのあとグループになってどれに○をつけたかをもとに議論。
1 朝、目覚まし時計で目が覚める 4 家族とおしゃべりしながら朝ご飯を食べる
7 会議で発言する        8 会議で発言はしないが、静かに話を聴く
11 昨日ケンカした友人にあったが、もうコミュニケーションを取りたくないので、
 無視して何も話さずに通り過ぎる。
荒木先生のクイズに関するコメント:「どれでも大正解です」
荒木先生が紹介されたコミュニケーションの定義
  Intrapersonal Communication 個人内(自己内)コミュニケーション
  Interpersonal Communication 個人間(対人)コミュニケーション
  Group Communication グループコミュニケーション(5~7人ぐらい)
  Organization Communication (30~50人ぐらい)
  Mass Communication マス・コミュニケーション
  Intercultural Communication 異文化間コミュニケーション

(2) ゲーム
・ シミュレーションゲーム「アルバトロス」:荒木先生とドイツからの留学生マテウス君がアルバトロスという土地の人になり、参加者の男女6名ずつ、計12人はその土地を訪れた人という設定。アルバトロス人は謎の言語を話す。男性には挨拶をしたりイスに座らせたりする。女性にはイスに座らず靴を脱げと指示する。謎の飲み物や食べ物をふるまったりする。最初は12人は合わせていたが、だんだん従わなくなった。最後に女性1人が選ばれて連れ去られるところで終了。
「どんなかんじがしたか」「どのくらいなら滞在できそうか」をグループ討論。
・ アルバトロス人や参加者を見ての感想:「男尊女卑」「(指示に従わない人に)罰則なしだった」「飲み物を飲むところから参加者が従わなくなった(飲み物はコーヒーとジュースを混ぜたもの)」「交渉する前提(単なる滞在or通商上つきあわねばならないのかetc.)がわからないので滞在期間やどこまで指示に従うか決められない」
・ 参加した12人の感想:「イヤだ、すぐ帰りたい! 勝手に第2夫人を選ぶな!」「男性優位」「頭を押さえつけた」「黄色い飲み物は毒かな?」「食べ物を食べるのは男性が先だった。それは男尊女卑or毒味?」
・ 荒木先生が紹介した分析法:上記の感想を以下の3点で分析
Description = what you see 見たこと
Interpretation(解釈) = what you think 考えたこと
Evaluation = what you feel about what you see 感じたこと
例えば「勝手に第2夫人を選ぶな!」というのは「解釈」である。「頭を押さえつけた」というのは解釈が入っている(=客観叙述っぽい「押さえた」と解釈を含む「押さえつけた」は違うということ)。
・ 荒木先生の解説(タネあかし):アルバトロス人を男尊女卑と見るのは日本的。アルバトロス人にとって大地は神聖なので女性は素足で触れて良い(=靴を脱ぐのと床に座るのが女性のみだったのは男性が尊ばれているからではない)。ものの見方を広げることが大切。

(3) 著書
・ 『異文化コミュニケーション・ワークブック』(共著、三修社)
・ 『自己表現の力の教室』(共著、情報センター出版局)
・ 『自己表現の技法』(共著、実教出版)

■参加者の感想
□ 文化の違いでもともと言葉を必要としない日本人が国際社会に出ていかなければならない今日この頃、そういう日本人にも合う英語教育を生み出してくださいという問題を突きつけられた日でした。
□ こういうのはそんなに好きじゃないが、いつも一定の楽しさ(オモシロサ)はある。
□ 「『わかっているはず』ではなく『わからないはずだ』と考えるのがコミュニケーションの始まりだ」という言葉を聞き、ハッとしました。明日からの生徒への接し方が変わります。
□ 大変面白かったです。大学時代、私は中国に留学していたが、一気に外国人(アメリカ、イギリスの人だけではなく、いろいろな国から来た人たち)と中国語という新しいコミュニケーション手段で交流をしたときの体験を思い出しながら、講演をきかせていただきました。また聴講させてください。
□ 非常に参考になった。今、不登校の生徒を抱えている。先生の話がとても役に立った。英語教育にも大いに役立ちそうだ。来て良かった。
□ 質問したとおり「日本人」のとらえ方が気になった。特に在日の生徒がWe Japaneseなどと言っているのを聞くと悲しくなる。
□ 「コミュニケーション能力を育てる」ということが強調されているが、「コミュニケーション」ということをきちっと考えていく必要があることがよくわかった。文化という面からもう一度英語教育を考える必要があると思います。
□ コミュニケーションの考え方、とらえ方が少し変わったかなと思いました。「違い」があるからこそコミュニケーションを大切にし、また、見直していくことが必要なんだと感じました。
□ 異文化論を学んだが、自ら体験している先生の講演には「生の文化」の違いが見えた。

2004年5月の荒木さんの講演会:会報担当の本音の感想

 5月は荒木さんのワークショップで機嫌が悪くなってしまって大人げなかったなーと思いますが、自分にとっては、ある面で似姿を見たような気がしたからだと思います。ああなってはいけないという、いい勉強になりました。
 冒頭でコミュニケーションの分類をして、意志のない対物まで含めて「すべて大正解です」というところからプッツンと切れました。
 ドイツのマルティン・ブーバーの『我と汝』(岩波文庫)で言うような、「我と汝」関係と「我とそれ」関係という区分なんて、ふっとんでしまいます。
 区分や分類なんていうのは、絶対的なものではない。だから「すべて大正解」でも間違いではない。しかし切実な思いから言っているのと、そうでないのとでは大違いだ。あまりの乱暴さにビックリした。そこが私に似ているところでもあるのだが、目の前で見せられてビックリだった。自戒しないとなー。
 学問とは何か、コミュニケーションとは何か、それがまさに問われていたなあと感じました。



© Rakuten Group, Inc.